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ゾンビのゾビ子さん2

 腐ったやきそばパンを食べて、ゾンビになり、意識を失った僕。
 それなのに――、
「オイ、起キロ」
 耳朶を打つ機械音声に意識は再び覚醒した。
「こ、ここは……?」
 まだクラクラする頭を押えて、辺りを見渡す僕。
 真っ白い部屋、僕は見覚えがなかった。
「ココハ、オ前ガゾンビニナッテカラ数百年後ノ世界。我々ロボットデハ、ゾビコニ勝テナイ為、コウシテオ前ノゾンビ化ヲ治シタ」
 再び、僕の鼓膜を震わせる謎の機械音声。驚いて発生源を見ると、そこにはドラム缶に手足を付けたようなロボットがいた。
 全然分からない現状。
 けれども、ゾビ子という単語を聞いて、僕の記憶は覚醒した。

 それは、僕がゾンビになってしまう前の記憶。
 ゾビ子さんというゾンビの美少女が、己の美貌で学校を支配してしまった時の記憶。
 僕は学校を救おうと、世界を救おうと、愛するゾビ子さんを殺すことを決意した。
 だが、できなかった。
 ゾビ子さんとの思い出であるやきそばパンが邪魔をして。
 だから、その迷いを断ち切るため、僕は彼女の目の前で、泣きながらやきそばパンを食べた。……まさか、そのやきそばパンの賞味期限が切れてるなんてね。まあ、当然の結果だけど。
 僕はゾビ子さんを救えなかった。
 これはゾンビとしての本能だけであり、私の意志じゃない。と号泣していたゾビ子さんを僕は救うことができなかった。

 そして、数百年が経った現在。
 まだゾビ子さんは誰かの救いを待っているらしい。
 僕は立ち上がる。愛する彼女を今度こそ救うため。
「行クノカ? デハ、コレヲ持ッテイケ」
 ロボットが渡してくれたのはやきそばパン。僕のために用意してくれたらしい。
 礼を言ってから、僕はやきそばパンを握り締めて駆け出した。
 ……僕は気付くべきだった。ロボットには賞味期限という概念がないことに。
 そうして、一行目に戻るのであった。

End

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