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勇者の秘め事

「馬鹿な……この俺様があぁぁぁぁぁ……」
そう言い残しながら魔王は倒れ、消滅する。
ついに俺たちは、世界を救ったのだ!

「やったぜ!」
「お母さん、仇は取ったよ……」
「うふふ、これで王様から褒美がいっぱい貰える」
と歓喜を上げる俺の仲間たち――戦士・僧侶・盗賊。
できれば俺も一緒になって喜びたいところだが、どうしても安堵の気持ちが先に来る。
だって俺、一週間前からゾンビなんだもん。
良かったあ〜、仲間たちにバレなくて。
バレたら、モンスターとして殺されるもん。
今こそ自分が「勇者」であることに感謝。
勇者の装備は基本的に全身鎧で、ごつい兜だから、腐った皮膚を見せなくて済んだのだ。
薄気味悪いダンジョンを先頭で歩かせられたり。人様のタンスの中を率先して漁り、下着ドロボウと間違われ追いかけられる。
などなど勇者っていう理由だけで散々な目に遭ってきたわけだが、ようやく報われた感じだ。
まあ、俺がゾンビになった理由も、一週間前手に入れた謎の肉塊を前にして、
「「こんな美味しそうな肉、勇者様が食べるべきです。どうぞ、どうぞ!」」
と、なし崩し的に仲間たちから食べさせられたのが原因なので、本末転倒もいいところなのだが……。
とはいえ、無事魔王を倒せて良かった。
なんか、世界中の人々の期待感が凄すぎて、魔王先に倒さないと、治療に専念できない雰囲気だったんだもん。
やっと、治すための旅を始められる。
「よし、みんな、帰ろう!」
俺は声を張り上げる。善は急げだ!
「待って。みんなケガしてる。回復します!」
僧侶が回復魔法を唱え、発動させる。
「…………え? ちょっ、待――」
ゾンビなので回復魔法は大ダメージ。
辺り一面が光に包まれ、俺は天国に召された。
次回、天国編。カミングスーン!

End

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