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麻婆豆腐

帰ってみると、我が家のキッチンがすごい散乱していた。
よって、その原因を犯人に尋ねてみたいと思う。
「何作ろうとしてくれてたんだっけ?」
「麻婆豆腐!」
「うん、そうだね。麻婆豆腐を作ってくれてたんだったね。……じゃあ、この中身が出し尽くされた赤の絵の具チューブは何かな?」
「色付け!」
「うん、斬新だね。独創派を謳う芸術家達もビックリだ。……じゃあ、この溶接機は?」
「豆腐を切った!」
「うん、性能の無駄遣いだね。まさかこんな柔らかいものを切断するはめになるとは、溶接機も思ってなかったんじゃないかな? それに、豆腐達も煮込まれるだけでなく、焼かれるはめにもなろうとは災難だったね。……じゃあ、この木工用ボンドの空箱は?」
「とろみ付け!」
「うん、木工用という文字が見えなかったのかな? 確かにこれは木綿豆腐だけれども、そんなウマイ回答は期待してなかったよ。それに、もはやとろみどころか固まっちゃてるし」
「食べて!」
「うん、ここまで突っ込ませて食べさせようとするとは……まぁ、食べるけどね。だって、好きな人の手料理だし………………うん、おいしいよ……」
そうして気絶した僕は、救急車に運ばれた。

「好きな人の頼みは、どんな無茶でも断れない」
それは男の性だと痛感した。

End

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