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発酵ヒーロー

「クラスの皆さん、課題を提出してください」
 先生の合図を聞き、クラスメイト達が、課題――【何か発酵したモノを作ってこよう】を机の上に並べていく。
 今回の課題でみんなを驚かせ、クラスのヒーローになりたい。
 そう考えた俺は、今日まで発酵の研究を怠らず、凄いモノを持参した。
 しかし、うちのクラスはなぜか皆、レベルが高い。負けるかもしれない。
 そう思うと緊張して、なかなか課題を出すことができない。
 さっきまでうるさく感じた、外からのパトカーのサイレン音も今では気にならない。
 俺は、みんなの課題を確認することにした。
 まずは、山田君。彼が作ってきたのはワイン。
 味も熟成が短いわりには美味しくできたらしい。……未成年のくせして、どうして味が分かったのだろうか? なぞだ。
 次はシオリちゃん。彼女が作ってきたのは、素晴らしい出来の納豆。
 ……だが、臭い。さすがは、残念美少女のシオリちゃんである。
 最後は佐藤君。う〜む、これは凄い。
 マザコンという性格を生かして、大好きなお母さんをゾンビにしてくるとは……なんとも歪んだ愛情である。
 やはり、うちのクラスはレベルが高い。
 だが、俺は笑みを隠す事ができなかった。
 なぜなら、俺の課題――隕石に付着していた細胞を発酵させ、培養することで完成した、巨大で従順なエイリアンの方が素晴らしいからだ。
 俺は、持ってきた檻のカーテンを開ける!

「いない……」
 空の檻を見て、俺はポツリと呟いた。
 同時に、サイレンの音と緊急アナウンスの声が再び俺の鼓膜を刺激する。
「ワインで酔って、納豆で臭くなり、ゾンビに噛まれてゾンビ化したエイリアンが暴れています。近隣住民は至急、非難してください」
 どうやらヒーローになるには、自分の課題を倒す必要があるらしい。
 悲鳴が響き渡る教室内で、俺は外に向かって駆け出した。

End

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