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腐女子

 俺は、焼いたゾンビ肉にかじりついた。
 香ばしくパリっと焼かれた皮を噛み切ると、中からジューシーな腐肉汁がとめどなく溢れてくる。それと同時に柔らかい腐肉を口いっぱいに頬張り、幸せをかみ締める。
「この上の階には、さらに美味しいゾンビが彷徨っているのかぁ……楽しみだ」
 ゾンビを焼くために自分が用意した焚き火しか光源がない、この薄暗いダンジョンの七階にて、俺は上の階のまだ見ぬ美味しいゾンビに思いを馳せた。
 地球に突如として現れたダンジョン。その塔から無数のゾンビが這い出たことで地球は絶滅の危機に陥った。
「ゾンビって実は旨いんだぜ」
「「えっ! マジで?」」
 しかし、当時ゾンビハンターとして英雄視されていた一人の男の発言により事態は大きく変動する。
 ゾンビに噛まれると自分もゾンビになってしまうが、自分からゾンビに噛み付く分にはゾンビにならない事が判明したのだ。しかも、地球上のどんな食べ物よりも美味。
 三大欲求の一つを大いに刺激された人類の反撃はすさまじく、地球上のゾンビをほぼ一掃。残りはダンジョン内のゾンビだけとなっていた。
 今では多くの美食家――もとい、冒険家たちが広大なダンジョンの攻略に乗り出しており、俺もそんな一人だった。
 現在、俺が攻略しているのはここ七階だった。上の階に行くほどゾンビがさらに美味しいのは常識だ。
 なので早く上の階に行きたいのだが、今日はソロ攻略だったのでこの辺で切り上げるのが妥当だろう。
「死んだらバカみたいだしな……ん?」
 帰ろうと思った矢先、隠し部屋を発見。
 入ってみると美少女ゾンビがいた。
「……いただきます!」
「い、いやあぁぁぁぁぁぁぁ」

End

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