幼い少女は必死に捕まえようとしていた。
だけど、赤トンボは網をくぐり抜けて空高く飛ぶ。
どうして少女は必死に捕まえようとするのか?赤トンボはその360度見える目で全てを見て、全てを知っていた・・・
この町で赤トンボを見かけるのは珍しい。
たまたま赤トンボを見かけた少女は友達に自慢した。
けれども友達は信じてくれなかった。あまつさえ、少女をウソつき呼ばわりした。
・・・だから少女は必死だった。
赤トンボも必死だった。この町に赤トンボは少ない。しかし、この世に生まれた生物として子孫を残さねばならない。
網が届かない所まで空高く飛んだ赤トンボは最後にもう一度少女を見た。
少女は泣きそうな顔をしていた・・・
・・・18年後、少女だった女性の部屋の押入れにはホコリをかぶった赤トンボの標本が眠っている。
今年の秋もこの町ではたくさんの赤トンボを見かける事ができる。
End